前回のハワイ不動産売却ガイドでは、売却時に必要な書類について解説しました。
今回は、いよいよ売却時にかかる費用について見ていきましょう。
思っていた以上に費用がかかって、売却しても必要資金が足りなかった・・・、なんてことにならないよう、しっかり事前確認しましょう。
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売却費用が全て記載される「売主最終計算書」
登記完了と同時に、エスクローが「売主最終計算書(Final Seller Statement)」という書類を作成し、売主はこれを受け取ります。この書類にはその取引で発生した全ての費用が詳細に記載されています。非常に重要な書類なので、一つひとつ、項目を見ていきましょう。
[図表]売主最終計算書(サンプル)
① 取引基本情報
不動産売買契約の概要(契約日・引渡日・売主/買主情報・エスクロー担当者・物件情報)が記載されます。
② 売買価格(Financial Consideration)
ここは、売買契約が成立した最終の売買価格情報が入ってきます。
この金額がMLS上の【SOLD DATA】に反映されることとなります。
③ 調整額(Prorations/Adjustments)
ここには、引渡日をもって日割り計算される項目が記載されます。
このケースでは、もともと支払っていた固定資産税が、引渡日以降は買主の負担になるため返金(Credit)が生じています。
④仲介手数料(Commissions)
こちらが仲介手数料の支払情報になります。売主エージェント/買主エージェントへそれぞれ支払いがなされていることが分かります。基本的に、アメリカの不動産取引では取引に関わる全ての費用はこのエスクローを通して行われるので、この明細書内で全費用が把握できるようになっています。
⑤エスクローとタイトル保険費用(Title & Escrow Charges)
これは、本不動産移転登記に関する全ての事務手続きを行ったエスクローに対する費用と、所有権に対してかける保険「Title Insurance(権原保険)」の売主側の負担金がチャージされています。
⑥登記費用(Recording Charges)
アメリカでは、不動産の所有権移転登記時に「譲渡税(Conveyance Tax)」が発生します。日本の「不動産取得税」に近い税金ですが、米国では売主が負担することになっています。
※新築物件をディベロッパーから購入する際には特約で買主負担となっているケースが大半ですが、中古の売買時には売主負担になります。
⑦管理費(HOA Charges)
HOAとは「Home Owners Association(管理組合)」のことです。
管理費や光熱費など、売主がすでに支払っていて精算が必要なものがこちらに記載されます。
このケースでは、電気代が徴収されていますが、電気代は実際に使用した時期と請求時期にズレが生じるため、後日電力会社から請求があった際に支払うための費用が徴収されています。
⑧その他の費用(Miscellaneous Charges)
こちらは「その他の費用」ということになりますが、本取引に関して発生したコストで、各ベンダーからの請求書に基づいてエスクローが各ベンダーへ支払います。この項目内に、非居住者に課せられる「FIRPTA(連邦源泉徴収税)」と「HARPTA(ハワイ州源泉徴収税)」についても記載があります。
このケースでは、売主が日本人個人だったため両方の源泉税が差し引かれていますが、もし日本法人名義でDCCAへの登録ができていればFIRPTAのみが記載されてくることとなります。
※2018年9月以降、HARPTAは7.25%へ引き上げられています。
⑨最終合計
②~⑧までの各項目の合計値が記載され、【Balance Due TO Seller】の金額が実際の売却後の入金額となります。
⑧に記載の【FIRPTA】【HARPTA】という源泉税が売買価格の20%相当なので、売却直後の入金額は少なくなります。しかし、この後実際に譲渡益の有無について税務申告し、実納税額を確定させた後に源泉税については還付されてくる、という流れになります。
参考:税理士法人アーク&パートナーズの内藤克先生との特別対談その1
※還付のタイミングは米国の行政の仕事の進め具合によるため、明確には分かりません。これまでの経験上はHARPTA(ハワイ州源泉徴収税)の還付は半年~1年、FIRPTA(連邦源泉徴収税)の還付は1年~1年半程度かかっていると思います。
当初の入金金額は、売却価格から約30%低いケースも
こちらは、個人名義で所有していた物件を売却した場合の実例になります(これは「Fidelity National Title & Escrow Services」というエスクロー会社の書式です。エスクロー会社によって書式は異なります)が、ハワイで不動産を売却する際にはざっと下記のコストが発生するということになります。
FIRPTA(連邦源泉徴収税):15%
HARPTA(ハワイ州源泉徴収税):7.25% ※法人名義の場合免除あり
Commission(仲介手数料):6% ※6%よりも下げることは可能 → 当社のコミッションについて
その他諸費用:約1% (エスクロー費用やタイトル保険費用、その他の清算など)
合計:約29.25%
もし、不動産を売却してその売却益を何か別のものに投資をするなり、なんらかの資金使途が決まっている場合は、当初に入金される金額は不動産売却価格から30%近くも低くなるということはあらかじめ念頭に置いておく必要がありますのでご注意下さい。
売却のタイミングはいつくるかわかりません。その時がきて焦らないように、事前にしっかりと準備をしておきましょう。