ステージング、という言葉をお聞きになったことがありますか?
物件を売却する際、少しでも綺麗に見せた方が売れやすいというのは既にみなさんご存知かと思います。それにもう少し手を加えて、物件を見にくるバイヤーへのアピール力を高める技を「ステージング」と呼んでいます。トランプタワーやリッツ・カールトンなどのホテルコンドの場合は、そこまで気にする必要はないかもしれませんが、別荘物件を売却される方はちょっと検討される価値はありそうですよ。
はたしてこのステージング、どのように売却時に効果を発揮するのでしょうか?全米不動産業者協会(NAR)が2017年にまとめた調査と、不動産ステージング協会(RESA)が1080物件調査をもとに発表した研究結果から、ステージングの効果を検証してみたいと思います。
参照: NAR 「Profile of Home Staging 2017」/ RESA 「RESA study of 1,081 homes」
ステージングとは?
簡単にいうと、ステージングとは内見に来てもらう際により良く物件を見せられるように、清掃や片付けだけでなく、修繕や内装のアップグレード、家具のアレンジ、アートや照明による演出までを総合して行うことです。ただし室内を自分の好みに仕上げる「デコレーション」とは違い、あくまでその物件を売るための演出だということです。そのため、ステージャーと呼ばれるステージングのプロがアメリカには多数存在するのです。
ステージングの効果とは?
RESAの調査から、ステージングの衝撃的な効果が浮き彫りになっています。
ステージングをせずにマーケットに出した物件は、ステージングを行うまで平均して184日かかったとあります。そしてステージング後には、そこから平均41日で売却されましたというのです。つまり、「ステージングなんて必要ない!」と思いマーケットに出したものの半年もの間は何もせずに売れるのを待っているのみ。いい加減何かしなくては、ということでステージングを施すと、そこから平均41日で売却されていったというのです。
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さらに驚きなのが、最初からきちんとステージングして売り出した物件は、平均23日での売却となっており、全くステージングをしない場合と比較して約90%もの時間節約につながるというのです。これは売却時のコストにも大きく関係する数値です。売れるのが早ければ早いほど、その間の管理費といった売主の負担は少なくなり、結果として高く売れたのと同じ効果を得ることになるわけです。
ステージングにかけるコストをどう考えるか、という問題ですね。しかし上記の結果を見る限り、最初からステージングにコストをかけてでも、早期売却をする方が結果として賢いのかもしれません。よく「あんまり急いでないから」と言いながらなんとなく売りに出している物件を見かけますが、マーケットに長く出ているという事実は物件の魅力を大きく損なう可能性があるのです。
「あのユニットいつも売りに出ているけど、何か問題があるんじゃないか?」
市場に長く出ていると、人々はこんなことを思い始めます。物件を探しているバイヤーにとっては、明らかに長くマーケットに出ている物件は魅力的ではないのです。市場に出て時間が経った物件よりも、フレッシュなものの方が値踏みされにくいので、一度売却の意思を固めたならば、特別な理由がない限りステージングをして早く売ってしまった方が良いのです。
何がバイヤーを動かすのか?
NARによると、買主エージェントの77%が、プロに頼んでステージングをしている物件の方が、バイヤーがその物件を自分の家としての将来像を描きやすいという回答をしていました。立地や間取り、家の向き等様々な条件はありますが、最終的に買手を動かすのは、その人の「ここになら住みたい」と感じられるかどうかです。たとえ投資用であっても、自分が絶対に住みたくない、と思う物件を購入に踏み切る人は少ないでしょう。そのことからも、ステージングによって、自分が将来住んでいる姿を想像できるということは、大変大きな意味を持っているのです。
バイヤーはどの部屋を見ている?
NARのレポートによると、リビングルームをステージングすることが売却に最も効果的であることがわかり、売主エージェントへのアンケート結果では回答者の55%がとても重要であると答えました。その後に主寝室、キッチンと続きますが、最も優先順位が低かったのはゲストルームでした。リビングや寝室、キッチンという毎日使う場所をステージングすることで、買主はそこでの生活をイメージしやすくなり、購入へ繋がると言えるでしょう。
ステージングで売値が上がる?
さらに、ステージングをすることで、何も家具が入ってない部屋と比べて売値に変化があったという結果が出ています。NARの調査によると、アンケートに答えた買主・売主双方のエージェントの約3分の1は、ステージングされた家は売値が1%から5%、ステージングされていない同じような物件と比較して、高くなっていると答えました。そして、売主のエージェントはその21%が、なんと買主からのオファー額が6%から10%も、ステージングをしていない場合より高かったと答えています。
逆に、全くオファー額に違いはなかったと答えた売主エージェントは、14%のみでした。
ご自身で行う場合も、ましてやプロに頼む場合にはその分コストはかかりますが、それは最終的には賢い選択なのではないでしょうか。物件価格の1%から5%というと、結構な金額となり、その利益分でステージングやその他経費に充てられる程度になることもあるはずです。
気になるステージングの料金は?
ハワイには何人も著名なステージャーがいますが、日本人でプロとして活躍している方もいます。そんなステージャーのお一人、decomodeのインテリアデザイナー兼オーナーである関戸敦子さんに料金について教えてもらいました。
家具とアクセサリーを揃える場合で、1ベッドで$4,000から、2ベッドで$6,000から、そして3ベッドで$7,000からとなります。家具はご自身のものを使ってアクセサリー類でステージングを行う場合は、1ベッドで$1,000~$3,000、2ベッドで$2,000~$5,000、そして3ベッドで$3,000~$7,000となっています。いずれも3ヶ月間の料金となります。
実際は、どこまで手を入れるかは千差万別ですし、物件によって広さもバラバラです。お客様のご予算に応じてのご提案も可能なようですので、上記の料金はあくまで参考としていただければと思います。
買主が購入する決め手は、やはり住みたい・所有したいという気持ちです。その気持ちを増幅させてあげるための手助けが、ステージングなのです。 できれば、プロやエージェントと相談しながら進め、少しでも早く、高値で売れるように進める方が良いでしょう。
上でも述べた通り、マーケットに出てから日が経つにつれて、売れづらく、価格は下がりやすくなります。
どんなにいい立地、物件でも買手の気持ちを動かせなければ売却に繋がりません。別荘物件の売却をご検討の方は、ステージングについて頭の片隅に入れておいてみましょう。