Empty Homes Tax 最新状況 2026
2025年1月、当Web Magazineで「ハワイの『空き家税』Bill 46をご存知ですか?」という記事をご紹介しました。
オアフ島で一定期間使用されていない住宅に対して、通常より高い固定資産税を課す、いわゆる「Empty Homes Tax(空き家税)」を導入しようという動きについて取り上げたものです。
当時、Bill 46はホノルル市議会で最終採決を目前にしながら採決が延期され、同時に市がErnst & Young(EY)へ委託した実現可能性調査が進められていました。
それから約1年半。
EYによる調査結果が公表され、さらに2026年には別の形でEmpty Homes Taxを導入しようとする動きもありました。
しかし結論から申し上げると、2026年9月現在、Empty Homes Taxはオアフ島に導入されていません。
今回は、前回の記事以降に何が起きたのか、そしてハワイに不動産を所有する日本人オーナーにとって、この問題を現在どのように捉えるべきなのかをご紹介します。
Contents
そもそも「Empty Homes Tax」とは?

Empty Homes Taxは、その名前の通り、一定期間使用されていない住宅に対して通常より高い固定資産税を課す制度です。ホノルル市議会で審議されていたBill 46の案では、原則として年間6カ月以上使用されていない住宅を「Empty Home」とする考え方が示されていました。
背景にあるのは、オアフ島の慢性的な住宅不足です。
ホノルルでは住宅価格や家賃の高騰が長年大きな問題となっています。一方で、別荘や投資目的などで購入され、年間の多くの期間で使用されていない住宅も一定数存在すると考えられています。
「新しい住宅を建設するだけではなく、既存の住宅ストックのうち使われていないものを賃貸・売買市場へ戻せないか」
という発想からEmpty Homes Taxが議論されてきました。
一見するとシンプルな制度ですが、「空き家」をどのように把握するのか、セカンドホームや相続物件、売却中の物件などをどう扱うのかといった問題があり、制度設計には多くの課題がありました。
約50万ドルをかけたEYの調査結果

こうした問題を検証するため、ホノルル市はErnst & Young(EY)にEmpty Homes Taxの実現可能性調査を委託しました。
2025年4月、その第1フェーズとなる調査結果が市議会に報告されています。
EYの分析では、制度の内容や税率によって結果には幅があるものの、Empty Homes Taxについて財政面では実施可能性があるとの結果が示されました。
主な試算では
・年間税収:約3,000万~5,500万ドル
・年間運営コスト:約440万ドル
・10年間で売却・賃貸市場へ戻る住宅:約640~2,000戸
とされています。
つまり、「徴税するためのコストの方が高く、制度として成立しない」という結果ではありませんでした。
一方、調査から見えてきたのが、実際にどの住宅を「空き家」と判定するのかという難しさです。
Bill 46にはさまざまな免除規定が想定されていました。免除を増やせば課税対象は減少し、同時に制度運営も複雑になります。
制度として成立する可能性はあるものの、実際に公平な税制として運営できるのかという課題は残りました。
ところが、市は調査を途中で打ち切り
EYの調査は本来、第2フェーズでさらに具体的な制度運営や行政上の仕組みを検討する予定でした。
ところが、ホノルル市はその後、この調査を途中で打ち切りました。
市のBudget and Fiscal Services DirectorであるAndy Kawano氏は、その理由として、市議会内で十分な政治的支持が得られていないことに加え、空き家を把握するためのデータ精度などへの懸念を挙げています。
特に大きな問題となったのが、「実際にその住宅が使われているのかどうかを、行政がどのように確認するのか」という点です。
調査では水道使用量などのデータも利用されましたが、戸建住宅では比較的把握しやすい一方、コンドミニアムなどの集合住宅では各住戸の使用状況を正確に把握することが難しいケースがあります。
オアフ島の不動産市場ではコンドミニアムが大きな割合を占めます。
制度の理念とは別に、誰が実際に課税対象なのかを公平かつ正確に判定できるのかという実務上のハードルが改めて浮き彫りになりました。
2026年、今度は「住民投票」というルートで再浮上

Bill 46の審議が進まない中、2026年には別のルートからEmpty Homes Taxが再び注目されます。
10年に一度設置されるHonolulu Charter Commission(ホノルル憲章委員会)において、Empty Homes Taxの導入を市議会に求める内容を、2026年11月の選挙で住民投票にかける提案が検討されました。
これが可決されれば、Empty Homes Taxについてオアフ島の有権者が直接意思表示をする機会が生まれる可能性がありました。
2026年7月20日の採決では、13人の委員のうち8人が賛成。
しかし、住民投票に載せるためには9票が必要でした。
賛成8票。必要な票まで、あと1票。
結果として、この提案は必要な賛成票を得られず、2026年11月の住民投票には進まないこととなりました。
Bill 46も成立せず
一方、本来のBill 46についても、2026年7月に最終採決を行う可能性がありましたが、実際には採決されませんでした。
Bill 46は2024年に提出された法案であり、期限までに成立しなかったことから、今回のBill 46によるEmpty Homes Tax導入の試みはいったん終了したと考えてよい状況となっています。
つまり、市議会におけるBill 46、そしてCharter Commissionを通じた住民投票案という二つのルートがありましたが、いずれも最終的には制度化には至りませんでした。
なぜここまで導入が難しかったのでしょうか?

Empty Homes Taxには、「使われていない住宅を市場へ戻す」という非常に分かりやすい目的があります。
しかし、実際に税制として導入しようとすると、問題はそれほど単純ではありません。
例えば、仕事や介護などの事情で一時的に島外に滞在している人、相続した住宅を保有している人、将来ハワイへ移住するために住宅を保有している人、あるいは売却活動中の住宅などを、投資目的で意図的に空室にしている物件と同じように扱うことが適切なのか、という問題があります。
そのためBill 46にはさまざまな免除規定が検討されていました。
しかし、免除を増やせば制度は複雑になり、行政コストも増加します。
さらに根本的な問題として、オアフ島に実際何戸の「Empty Home」が存在するのかについても、正確に把握することは容易ではありません。
「空き家」の定義と、その利用実態をどう確認するのか。
この二つが、Empty Homes Taxを実際の税制として運営するうえで大きなハードルになったと考えられます。
日本人オーナーへの影響は?
では、ハワイに不動産を所有する日本人オーナーは、今回の動きをどのように考えればよいのでしょうか。
まず最も重要なのは、2026年9月現在、オアフ島にEmpty Homes Taxは導入されていないということです。
したがって、現時点でこの税金を理由として、所有物件を売却したり、長期賃貸へ切り替えたりする必要が生じているわけではありません。
また、今回のBill 46と住民投票案がともに成立しなかったことを考えると、少なくとも現時点では、Empty Homes Taxを前提として不動産の保有方針を大きく変更する状況ではないと考えています。
一方で、「これで空き家税の議論は完全になくなった」と考えるのも早いでしょう。
ホノルルでは過去にも同様の制度が繰り返し提案されており、その背景にある住宅不足や住宅価格・家賃の問題そのものが解消されたわけではありません。
今後、名称や制度設計を変更した新しい法案として再び議論される可能性は残っています。
今回の動きから見えてくること

今回の一連の動きを見ていると、Empty Homes Taxは「導入するか、しないか」という単純な議論だけでは捉えにくい制度であることが分かります。
EYの調査では、一定の税収を確保し、一部の空き家を市場へ戻す効果が期待できるとの試算が示されました。
一方、その効果を実現するためには、誰が実際に住宅を使用しているのかを行政が把握し、多数の免除規定を適切に運用し、所有者からの申告や異議申し立てにも対応する必要があります。
特にコンドミニアムの多いホノルルでは、その運用は決して簡単ではありません。
制度の目的には一定の理解が得られていても、それを公平かつ現実的な税制として実際に運用する段階になると、さまざまな難しさが生じる。
今回のBill 46が成立に至らなかった背景には、こうした事情もあったと考えられます。
今後も固定資産税の動向には注意が必要
今回のBill 46によるEmpty Homes Taxについては、ひとまず一区切りついたと考えてよいでしょう。
ただし、オアフ島では住宅不足を背景として、不動産の所有・利用実態に応じて税負担を変えるという議論が今後も続く可能性があります。
特にハワイに居住していない日本人オーナーにとって、固定資産税制度の変更は保有コストに直接影響します。
そのためEmpty Homes Taxだけを見るのではなく、Residential、Residential A、Hotel & Resortなどを含めたホノルル市の固定資産税制度全体が今後どのように変化していくのかを継続的に確認することが重要だと考えています。
現時点では、Empty Homes Taxによってハワイ不動産の保有環境に大きな変化が生じたわけではありません。
今後、新たな法案や具体的な動きが出てきた場合には、改めて当Web Magazineでご紹介したいと思います。
本件に関するバックナンバーはこちら!
2025年1月17日公開:
