物件に関して売主が知っている情報は全て開示!
ハワイ不動産の契約書6ページから11ページまで見ていきましょう。
I-1:Seller’s Obligation to Disclose(売主の情報開示義務)
売主には、物件の価値に重大な影響を与えるような現在または過去における事実や欠陥、状態を開示する義務があります。通常はハワイの不動産協会が用意する「Seller’s Real Property Disclosure Statement」という定型フォーマットに従って、売主が自ら記入をする必要があります。この開示情報を、契約後何日(指定しなければ10日)までに提出するかこの条項で記入されます。
売主はもちろん、この開示内容に虚偽の記載をしてはいけません。しかし、売主は不動産や建築の専門家ではありません。そのため、万が一開示内容に不備があったとしても、売主に対して法的な責任を追及することはできません。
買主は開示書を受け取った時点で、受領書を売主側に発行する必要があります。その後じっくりと内容を確認したら、確認の通知も必要になります。それぞれの期日もここで指定します。また、内容を確認し、何らかの不備や懸念点があれば解約することも可能です。もちろんその時点で手付金を支払っていれば、即時返金されます。
I-6 General Disclosures(一般的な開示情報)
物件の価値に影響を及ぼす事実や欠陥というのは、実は非常にあいまいです。 そこで、この項目では一般に開示が必要と思われる情報が記載されています。
・政府・自治体または民間による規制情報
・許認可情報
・アスベストに関する情報
・有害廃棄物と有害物質に関する情報
・下水処理に関する情報
・カビに関する情報
・性犯罪者情報
・洪水エリア情報
・鉛含有塗料に関する情報
・リノベーションや修繕での鉛含有塗料に関する情報
・気候変動と自然災害に関する情報
・送金詐欺や個人情報漏洩に関する注意
最も気になる契約キャンセルについて
J-1:General Inspection of Property Contingency(室内点検)
このJ-1という条項がハワイの売買契約書の中で、買主にとって最も重要な点となります。売買契約書上には、いくつかの契約解除条項がありますが、いずれも解約するのにはもちろん正当な理由が規定されています。しかし、このJ-1条項に関しては実質「無条件解約」が可能な条項として使われています。
買主は、買主の費用にて物件点検を行うことが出来るとあります。自分で点検をすることもできますが、ほとんどは専門のインスペクターに依頼します。そして点検後に、インスペクションレポートという報告書を発行してもらい、その内容・結果をしっかりと確認する権利となります。このレポート結果を受け入れる場合は、このまま契約は進み、結果気になる点が見つかればここでキャンセルをすることも可能です。物件点検では、物件に関してのあらゆる点について点検をすることができるので、極論すれば「思ったよりも景色が良くない」という理由でも解約できます。特に理由を伝える必要もなく、「J-1条項により解約します」という書面による通知を出せば解約ができてしまうのです。
オファーを入れる段階で、「売買契約成立日から●日以内に室内点検を行う」という日数を設定しますが、売主側としてはこの日数を長く設定されると無条件解約期間がそれだけ長くなることを意味しますので、短く設定しようとカウンター・オファーを入れてきたりします。
正確には、キャンセルするか進むかという二択ではありません。インスペクションレポートで、欠陥や故障、汚れなど気になる点が発見された場合、それらの修繕を売主にリクエストをすることも可能です。もちろん、売主がすべてそのリクエストを受け入れるかどうかはわかりませんが。
もしシロアリが見つかったら?
L-1 Termite Inspection
(シロアリ検査)
ハワイにもシロアリはいます。戸建てやタウンハウスはもちろんですが、コンドミニアムでも他人事ではありません。キッチンなどのキャビネットは備え付けのものも多く、こういった家具もシロアリ被害にあうことは多々あります。そのため、買主はシロアリ検査を行うことが強く勧められています。
L-2 Termite Inspection Contingency
(シロアリ検査の条件)
シロアリ検査は、そのライセンスを所有している専門業者へ通常は売主の負担で依頼します。専門家の検査後、シロアリ検査レポートが提出されます。このレポートでは、実際に立ち入ることが出来る範囲で視認できる被害のみが報告されます。つまり、壁の裏側や床下などは調査されません。
シロアリ被害(木くずなど)が確認された場合は、売主の費用で駆除をします。ちなみに売主は駆除の依頼みで、予防策までは講じる必要はありません。
L-3 Termite Damage
実際にシロアリが見つかった場合、物件価値に影響を与える事実として上記で触れた売主開示情報に追加されることとなります。つまり、シロアリが見つかった場合は、それを理由に買主から契約を解除することが可能になるのです。
「知らなかった」を防ぐポイントです
M-1:Contingency on Documentation Approval
(文書の承認に関する未確定条件)
コンドミニアムの売買を行う場合、売主はその物件に関する登記書類・管理組合の運営状況・直近3回の理事会議事録等の文書一式を買主に提供する必要があります。こちらには、管理費の徴収状況や滞納状況、また、理事会で現在検討されている懸案事項等が記載されています。
例えば、大規模修繕を行う必要があるが現状の管理費ではその費用が賄えない場合などは、オーナーから特別徴収がある可能性もあります。またはそれを見越して、毎月の管理費が来年度から上がることが決定している場合など、理事会の議事録に記載されていたりします。購入後にそれは知らなかった、ということがないように確認をする必要があるわけです。もちろん、その時点で確定していないものについては分かりませんが、管理組合が物件を運営していくにあたって、年間の想定予算案は策定されています。それに対して、各住戸から徴収する管理費が十分か不十分かを判断できる情報が記載されていますので、その点は注意深く見る必要があります。
投資物件はここも注意が必要!
ここではN-1かN-2のいずれかを選択する必要があります。
N-1:Delivery of Possession of the Property Free of Tenants
(テナントなしでの所有権引き渡し)
N-1は、売買対象物件の引渡しを、完全に空室の状態で行う場合に選択します。ハワイに自分の別荘を購入したにも関わらず、他の占有者がいては意味がありませんので、引渡し時には完全にクリーンかつクリアな状態で引渡しを行うことを条件とするものです。引き渡しまでに、いかなる賃貸契約、テナントの所有物、管理会社との契約、バケーションレンタル契約などを解約し、クリーンな状態での引き渡しとなります。
N-2 Rental Documents
(レンタル関連書類)
N-2では、売買対象の物件が賃貸契約中であり、買主がその契約も引き継ぐ場合に選択します。売主は現在締結している賃貸借契約書や賃貸管理契約書の内容を開示し、買主はその内容の確認を行います。買主がその内容に対して承認をしない場合、解約が可能になります。
賃貸関連の書類で、現在の賃貸がきちんと合法的に行われているのかは最低限確認しましょう。バケーションレンタルなどは特に規制が変更になったばかりです。あとからトラブルも引き継いでしまうという事態にならないよう、しっかりとチェックをしたい項目です。
また、Trump Tower WaikikiやThe Ritz-Carlton Residence Waikiki Beachのようなホテルコンド形式の物件の場合、レンタルに出すオーナーも、別荘として使用するオーナーも混在しているので、現在レンタル中の物件を別荘用に購入する場合には注意が必要になります。