ホノルルの短期レンタル規制はどう変わる?Bill 62と今後の行方

ホノルルではここ数年、短期賃貸に関する規制の見直しが続いており、今年もその動向に注目が集まっています。今回は、2025年1月にホノルルのブランジアーディ市長が署名し法制化されるも先行きが難航していることで注目されている「Bill 62」についてご紹介します。

この条例は、これまでホノルル市内の多くのエリアで30日以上の賃貸契約であれば合法とされていたルールを、「90日以上の契約期間」に引き上げるという内容です。施行は2025年9月以降とされています。

ただし、こうした変更はアメリカ連邦裁判所では依然として認められておらず、実際に施行されるかどうかは不透明な状況です。現地点ではこれまで通り「30日以上の契約」で合法とされており、すぐに運用を変更する必要はありません。

本記事では、将来的な可能性を踏まえつつ、知っておいた方がいいこと間違いなしのBill 62の内容や背景、そして現在も続く法的議論について解説していきます!

そもそもBill62とは?

Bill 62は、ホノルル市における短期賃貸のさらなる規制強化を目的とした条例で、従来「30日以上の賃貸契約であれば合法」とされていた住宅エリアにおいて、新たに「90日以上の契約期間」が最低条件として求められる内容が盛り込まれています。

ホノルル市が公表した最新の資料 (A BILL FOR AN ORDINANCE) には、この変更内容がさりげなく盛り込まれていますが、仮に正式に施行されることになれば、ホノルル市内で短期賃貸を行っている多くのオーナー様にとっては、少なからず影響を及ぼす可能性があります。

A BILL FOR AN ORDINANCE の全文はこちらからご確認いただけます。

ただし、これはあくまで「住宅エリア」における短期賃貸物件の話であり、下の地図上、ピンク色で示されている「リゾートエリア」はBill62の対象外になりますのでご安心ください。日本人投資家の皆様から人気のイリカイ・ホテルリッツカールトンカライ・ワイキキなどは全てこちらのリゾートエリアに含まれています。

City and County of Honolulu ウェブサイトより引用

また、注目すべき点として、この条例では90日未満の短期レンタルを広告すること自体も禁止行為の対象となっています。たとえば、AirbnbやVRBO、自社ウェブサイトなどで「1ヶ月から貸し出し可能」と掲載するだけでも、違反とみなされる可能性があるというわけです。「初回の罰金は最大5,000ドル、さらにその違法物件の広告が掲載され続けた場合には、1日あたり最大10,000ドルまで増額される可能性がある」と条例は記載しています。

ホノルル市が短期賃貸運営に対して取り締まりを強化する姿勢が強く感じられる内容になっていますね。

違法レンタルの現状

ホノルル市がここまで短期レンタルの規制を強化しようとしている背景には、大量の違法物件が市場に出回っている現状と、それらに対する罰金を十分に回収できていないという市の課題があります。

Airbnb最大級のデータを扱うInside Airbnb によると、現在ホノルル市内には約7,900件のバケーションレンタルのリスティングが存在していますが、市に合法物件として登録されているのはわずか約2,100件にとどまっています。つまり、大多数の物件が必要な許可を取らずに運営されているのが現状です。

このような違法な短期賃貸業者に対し、市がこれまでに科した罰金の総額は2,890万ドル(日本円で約44億円)に上ります。しかし、実際に回収できたのはそのわずか3.79%、約1億7,000万円程度にすぎません。

データ出典:City and County of Honolulu

罰金徴収が機能していない背景には、いくつかの構造的な課題がありますが、1番顕著であるのは、行政の人員・リソース不足です。違法レンタルを特定するためには、滞在記録や稼働状況の確認といった調査・証拠収集が必要であり、それには多大な時間とコストがかかります。

さらに、違法運営者の中には国内外の優秀な弁護士を雇い、問題が起きた際には、法的に強固な防御体制をとっているケースも多く、州の法執行体制が限られている離島ハワイでは対抗が難しいのが現実です。

現地ニュース報道の様子(HAWAII NEWS NOW より引用)

この問題は地元ニュースでも大きく取り上げられ、住民からの抗議や制度の見直しを求める声が高まっています。筆者の見解ではありますが、地元住民の反発が強まる中で、ホノルル市側も早急に対応を示す必要に迫られ、とりあえず規制強化の法案を発表せざるを得なかったという空気感があったのではないかと感じています。

とはいえ、現状では法案以前に人員やリソースの不足が深刻な課題となっており、仮にBill 62が正式に施行されたとしても、どの程度の実効性があるのかは疑問が残ります。また、この法案の運用にかかるコストや労力に見合うだけの効果が得られるのかという点も慎重に見極める必要があるでしょう。

これまでの法案改正の流れ

冒頭でも述べた通り、短期賃貸に関する法改正の争いは今に始まったことではなく、この数年間立て続けに行われています。以下は、2019年から2025年現在までの短期賃貸に関する法改正と裁判の流れを表にしたものです。

短期賃貸に関する法改正と裁判の流れ(2019〜2025年)

2022年には、Bill41という名称で、現在のBill62と類似した内容の短期賃貸規制法案が提出され、施行まで残り10日という段階まで進んでいましたが、連邦裁判所によって差止命令が出され、賃貸期間の最低日数を30日から90日に延長するという規定は一旦白紙となりました。

しかし昨年、ハワイ州知事ジョシュ・グリーン氏が「Act 017」と呼ばれる法案に署名し、各郡に対して短期賃貸に関する規制強化の権限を従来よりも大きく与えることが決定されました。これを受けて、再び「Bill62」と名称を変えた上で、90日未満の賃貸を規制する新たな法案が提出されるに至った、というのが今回の流れです。

今回は2022年当時よりもホノルル市により大きな決定権が与えられていることから、「今度こそ施行されるのではないか」との見方もありますが、一方で連邦裁判所の承認がなければ施行は不可能である点は変わらず、結果として2022年と同様の結末になる可能性も指摘されています。

まとめ

ホノルル市内における短期賃貸運営は、観光地としての高い需要ゆえに、地元住民との間でさまざまな問題を引き起こしています。現時点では、Bill62の施行に関して正式な書類やガイドラインは一切発表されておらず、ホノルル市の公式ウェブサイト上でも、「住宅エリアにおける30日以上の短期賃貸は認められている」との記載があるのみです。

まずは、新しい法を制定するのではなく、今対処できていない違法賃貸の取り締まりを強化してほしいというのが切実な願いですが、Bill62に関する最新情報は随時更新していきますので、引き続きメルマガの登録・確認をお勧めいたします。

また弊社はどんな状況にも応じた最善の物件選びや売却方法をお手伝いさせていただきますので、些細なことでもご質問などございましたらお気軽にお問い合わせください。