オアフ島にて3%のホテル税徴収開始 – 2021年12月14日より

2021年12月14日、ホノルル・カウンティの市長の署名によって、オアフ島での短期宿泊施設税(通称ホテル税)3%の徴収が正式に決定しました。この3%は、ハワイ州が徴収する10.25%のホテル税に上乗せする形での徴収となり、 12月14日以降、オアフ島の短期宿泊施設利用者には合計13.25%のホテル税が課されることになります。

ホテル税とは?

ホテル税は通称であり、正式名称はTransient Accommodation Tax、直訳すると短期宿泊施設税です。ハワイ州で継続して180日未満、ホテルやバケレン、タイムシェア、その他の宿泊施設に人を宿泊させると、ハワイ州へホテル税の納税義務が発生します。直接の納税義務者は宿泊施設の所有者や運営者ですが、ホテル税を宿泊料に上乗せして宿泊者に請求することが認められており、結果的に宿泊者が負担することが一般的になっています。

増税の背景

ホテル税は1987年に5%の州税として導入され、制定以来州が徴収し、それを各カウンティに分配するという方法が取られていました。しかし、パンデミックによってハワイ州観光局の財政が大幅に悪化。2020年、救済のためにホテル税をハワイ州観光局の財源に充てるよう州の法律を変更、さらに各カウンティは独自に最高3%のホテル税を別途徴収できる旨を定めました。(House Bill 862 / Act1 of 2021 special session:2021年7月8日成立)

この変更に基づき、カウンティが独自のホテル税を徴収するためには、各カウンティがそれぞれ条例を制定する必要があります。ホノルル・カウンティではハワイ時間12月14日午後12時、Bill40に市長が署名し、3%のホテル税を独自徴収することが正式に決定しました。カウンティのホテル税は、州のホテル税と同様にホテル、バケレン、タイムシェアなどの事業者(またはその宿泊者)に課税されます。

変更前後の比較

今回の増税前と後で、オアフ島に宿泊する人が支払う料金は以下のように変わります。これに加えて、多くのホテルで1晩あたり$25〜60程度のリゾートフィーを請求していますので、ホテルに宿泊する場合、宿泊者が実際に支払う料金はさらに高くなります。

2021年12月13日まで 2021年12月14日以降
内訳 宿泊料
+売上税4.5〜4.712%
(カウンティサーチャージ込み)
+州のホテル税10.25%
宿泊料
+売上税4.5〜4.712%
(カウンティサーチャージ込み)
+州のホテル税10.25%
+カウンティのホテル税3%
合計 宿泊料+14.75〜14.962% 宿泊料+17.75〜17.962%

税収の使い道

今回新しく定められた3%のホテル税は、ホノルル・カウンティがその使い方を決定することができます。この3%によって、2021年7月1日からの1年間で$7,500-8,500万程度の税収を見込んでおり、2027年には年間$9,900万に達する予想です。この税収の58%は一般的な自治体の財源として、33%は建設中の鉄道計画に、残り8%は自然資源の保護に使うことが定められました。2年後から配分の比率が変わり、42%が一般の財源、50%が鉄道計画、8%が自然資源保護となり、鉄道計画が大きな割合を占める予定です。

オアフ島以外の状況

オアフ島以外でも同様の審議がなされ、他の3島ではオアフに先駆けて条例が制定されました。カウアイ島とマウイ島では既に課税が開始されており、ハワイ島では年明けからの開始となります。3島とも課税上限の3%の徴収が決定しました。

条例制定 実施開始
カウアイ島 2021年9月15日 2021年10月1日
マウイ島 2021年10月15日 2021年11月1日
ハワイ島 2021年10月10日 2022年1月1日

ハワイ&日本の人々の反応

条例成立までの審議の過程で出された意見や、ニュースサイトのコメント欄などを見ると、増税自体は賛成も多い印象です。一方、徴収された税の半分近くが鉄道に使われることについて、鉄道ばかりに税金を使いすぎだという意見が多く見られます。市議会で反対に投票した議員3人も、税収の使い道に賛成できないとしていました。これまで既に多額の公金を注ぎ込んで尚、資金不足により完成が危ぶまれる鉄道計画には、そもそも後ろ向きな意見が多いところ、新たな税収がそこに充てられるとあって、反対の声が多数上がるのは当然と言えそうです。

また、ホテル業界は法案審議の段階から相当反発したようです。10.25%から13.25%へ約30%も税率が上がれば、宿泊客はより安い宿や違法なバケレンを使うようになるとの主張でした。今回の増税で、ハワイ州の宿泊に関する税率は全米1となるため、観光客数へ影響するのではないかとの懸念が聞かれました。最後に条例に関する意見をいくつかご紹介します。

賛成意見

「この条例は切実に必要とされている収入をもたらし、市民のためになる、市の中核となるシステムのメンテナンス費用も生み出す。警察、消防、インフラの保全費用、公園・ビーチ・道路の改修、そして鉄道計画の資金源となる条例成立にご協力くださった市議会に感謝したい。」

ーホノルル市長Blangiardi氏の発言を要約引用

「この税収があれば、私たちは雇用を生み出し、バス体系と連動する機能的な鉄道システムを建設することができる。反対意見があることも理解しているが、それを受け止め、この資金は慎重に、最も良い形で使わせていただきたい。」

ーホノルル鉄道計画の担当部署のメンバーLori Kahikina氏の発言を要約引用

「旅行者は短期間ハワイに来て、ハワイの自然を消費して私たちの税金で整備したインフラを使って帰るだけ。税金という形でハワイに貢献してもいいと思う。」

ーホノルルのニュースサイトに投稿された現地の方のコメントを要約引用

「マウイ島でのホテル税3%徴収は、オーバーツーリズムを防ぐことも目的の1つらしい。ハワイでのバケーションはこれまでよりも高くつくことになるが、住民のための地元インフラへの投資が進めば、より多くの観光客を受け入れることができるようになるはず。観光客にもメリットのある取り組みかもしれない。」

ー日本のトラベル系ウェブサイトの記事を要約引用

反対意見

「旅行者から徴収するお金だからと言って、無駄にしていいい訳ではない。カウンティのホテル税による税収は公園を整備したり、警官やライフガードの人件費などに充てるべき。その他にも財源が必要なことは山ほどある。」

ーホノルル市議会で反対票を入れたHeidi Tsuneyoshi議員の発言を要約引用

「これは私の個人的な発言ですが、ホノルル鉄道計画の担当部署は$20億の資金不足をどのように解決するのか、具体的な案を示していません。ホノルル鉄道計画にこれ以上資金を回す前に、議会はもっと議論をするべき。」

ーホノルル鉄道計画の担当部署のメンバーNatalie Iwaasaさんの発言を要約引用

「パンデミックで大きなダメージを受けたハワイの力になろうと、次回ハワイに行った際はたくさんショッピングするつもりでしたが、税率が上がるとそれも難しいかも。」

ーハワイ好きの日本人の方のブログを要約引用

「10年以上前に、旅行者からの利益を得ようとニューヨークでもホテル税を大幅に上げたが、結果的に旅行者に敬遠され、税収は減り、1年後には元の税率に戻された。税率を上げれば税収が上がるわけではない。ましてやコロナの影響が残るうちはなおさら。」

ーホノルルのニュースサイトに投稿された現地の方のコメントを要約引用

※ちなみに、ニューヨークでは今年6月1日からの3ヶ月間、旅行者を呼び戻し、ホテルの雇用をを守るために、ホテル稼働率税(ハワイ州のホテル税とほぼ同様の税金)5.875%の徴収を停止しました。ハワイ州とは全く逆の政策で興味深いです。

「約18%もの税金は旅行者の減少を招きかねず、ハワイの復興の妨げになる。仮に税収が上がったとしても、宿泊費用に多くの予算を割いた旅行者は、ハワイの他の商品・サービスに多くは消費しないだろう。そうなれば、本来ハワイの事業者の収入になるはずだった旅行者の予算は、事業者には回らない。また、ハワイ州の居住者が仕事や休暇で州内を移動する際にも同様の税金がかかるので、ビジネスへの悪影響や、生活費の増加が懸念される。」

ーハワイのNPO法人の記事を要約引用