移動がもっと便利に?ハワイの最新鉄道プロジェクト「スカイライン」

ハワイでの観光や生活に関心のある方にとって、現地での移動手段の確保は非常に重要なポイントです。車社会のアメリカでは「車がないと不便」という声が多く、長期滞在者や投資家にとっても、どこに滞在するか、どの物件を購入するかを決める際の大きな判断材料となります。レンタカーや配車アプリ「Uber」はコストが嵩み、時には言語の壁に直面することもありますし、バスは移動に時間がかかったり、夜間の安全面で不安が残る場合もあります。

そうした中で注目を集めているのが、現在ホノルルで進行中の新高架鉄道プロジェクト「スカイライン」です。このプロジェクトは、オアフ島西部から東部までを結ぶ全長約32km・19駅の鉄道路線で、最終的にはダニエル・K・イノウエ国際空港からアラモアナ・センターまでをつなぐ計画です。段階的に延伸され、2031年の全線開通を目標としています。

このプロジェクトは長年にわたり「本当に完成するのか」と不安視されることもありました。しかし、現在では工事がダウンタウン周辺にまで進み、開通に向けた期待が再び高まっています。本記事では、このプロジェクトの概要に加え、今後の鉄道開通が日本人観光客や現地に滞在する不動産所有者に与える影響についてみていきます!

プロジェクト概要と現在の進捗について

高架式自動運転鉄道「スカイライン」は、ホノルル市最大級の公共インフラ整備であり、アメリカ本土でも珍しい完全自動運転鉄道です。計画・設計・施工は Honolulu Authority for Rapid Transportation(HART)が担い、運行はHitachi Rail、運営はホノルル交通局が担当します。

オアフ島の東西を結ぶ主要交通軸では、通勤や通学に支障をきたすほどの渋滞が日常的に発生しており、本プロジェクトはその混雑緩和と車利用削減による環境・エネルギー効果を目的としています。また、車を持たない観光客や地元住民に新たな移動手段を提供し、経済活性化にも寄与することが期待されています。

スカイラインはすでに第1期区間と呼ばれる、オアフ島西部のカポレイからアロハ・スタジアムの間を結ぶ9駅分が開通しており、通勤・通学を中心に地元住民の利用が始まっています。

出典: City and County of Honolulu https://www.honolulu.gov/dts/skyline/home/

第2期区間であるアロハ・スタジアムからホノルル国際空港を経由し、カハウイキ(ミドルストリート・トランジットセンター)までの区間も、現在ほぼ完成に近づいています。ホノルル市の公式サイトによると、同区間は2025年10月16日に開通予定です。特に空港に鉄道駅が開設されれば、観光客への認知度が一気に高まることは間違いないでしょう!

また、先月8月中旬からは、カハウイキからアラモアナセンターへ向かう第3期区間の工事が開始され、今後はダウンタウンやチャイナタウンを含むエリアで駅建設が進められる予定です。

これらの地域は歴史的建造物やローカルグルメの名店が集まる人気観光地であり、完成後には観光ルートの選択肢が大幅に広がると考えられます。さらに、工事に伴い一部エリアで通行止めが実施される予定であり、重要なお知らせについては随時メルマガなどを通じてご案内いたします。

このように、鉄道は段階的な延伸を重ね、最終的には2031年の全線開通を目標としています。

日本人観光客にとってのメリット

ハワイ滞在において、これまでタクシーやバス移動に苦労していた観光客にとって、このプロジェクトは多くの恩恵をもたらします。

1. 空港からの移動がスムーズに

これまで空港からアラモアナへ移動する際、レンタカーを利用しない場合はシャトルバスやタクシーが主流でした。しかし、鉄道が開通すれば渋滞を回避でき、定時性の高い移動が可能になります。特に帰国時には、飛行機の出発時間に合わせた安定した移動手段として重宝されるでしょう。さらに、通常の鉄道とは異なり、大型スーツケースはもちろん、サーフボードや自転車も車内に持ち込めるため安心です。

2. 観光ルートの多様化

ダウンタウンやチャイナタウンなど、これまで日本人観光客にとってはアクセスしづらかったエリアにも短時間で移動できるようになります。観光地間の移動時間が短縮されることで、1日の観光プランの自由度が大幅に向上し、新たなハワイの魅力を発見するきっかけにもなるでしょう!

3. 交通費の節約

タクシーに比べ、鉄道は圧倒的に低コストです。家族旅行や長期滞在では、移動コストの削減効果が特に大きくなります。円安と物価高が続く現状において、この経済的メリットは非常に大きいといえます。

不動産所有者・投資家にとっての影響

鉄道インフラの整備は、沿線エリアの不動産価値に直接影響を与えるケースが多く見られます。日本では新駅の開業や路線延伸に伴い、周辺地価が上昇する事例が珍しくありません。車社会が根強いハワイでは、日本ほどの上昇効果を期待するのは難しいかもしれませんが、それでも以下のようなメリットが見込まれます。

1. 物件価値の上昇

駅近物件は、観光客だけでなくローカルの賃貸需要も高まります。特に、空港やビジネス街、主要観光地へ直通でアクセスできる物件は以前よりも利便性が評価され、将来的には売却・賃貸の両面で好条件が期待できるかもしれません。

2. 短期・中期滞在者の需要増加

ハワイでは近年、短期賃貸規制が厳格化されていますが、1か月以上の中期滞在や通勤・通学目的で滞在する人にとって、鉄道沿線は魅力的な立地となります。現在はワイキキやアラモアナ周辺の物件需要が高い一方で、鉄道の開通によって郊外エリアにもアクセスしやすくなり、より割安な賃貸物件を探せる可能性が高まります。

3. エリア再開発による恩恵

 駅建設に伴い、周辺のインフラや商業施設が整備され、エリア全体の環境や治安の向上が期待されます。特に、ワイキキやアラモアナに比べて治安面で懸念されることの多いダウンタウン周辺も、鉄道開通によって利便性と人の流れが増えることで、治安改善が進む可能性があります。

利用方法とチケット購入について

現在の「スカイライン」乗車方法とチケット購入について簡単にご紹介します。

スカイラインを利用するには、事前に上の写真にもある「HOLOカード」と呼ばれるプリペイド式のカードが必要です。カード自体は、ABCストアやフードランドなどのスーパーで手軽に購入できます。また、各駅に設置されている券売機でもカードの購入やチャージが可能です。

運賃はホノルル市内を走る公共バスと同じ料金体系が採用されており、片道は$3.00、1日乗り放題は$7.50で利用できます。なお、HOLOカード自体は$2.00で販売されています。

スカイライン運賃表

HOLOカードにチャージが完了したら、改札のリーダーにタップして入場します。改札にはベビーカーも通れる幅広タイプや、車椅子利用者向けに低い位置にリーダーが設置された改札も用意されています。

電車内でのマナーは基本的に日本と同じですが、飲食は禁止されていることや、介助犬などは乗車可能であることが挙げられます。

留意点と今後の課題は?

もちろん、すべてがメリットばかりではありません。特に、日本と異なり、計画が予定通りに進まないのがアメリカ・ハワイの特性であり、2031年の全線開通まではまだ時間がかかります。工事の遅延リスクに加え、すでに開通している区間では利用客数が予想を下回り、赤字運営のスタートとなったことも報じられており、今後の収益状況次第ではプロジェクト規模が縮小される可能性もあります。

また、高架鉄道という構造上、沿線の一部では騒音や景観の変化が懸念されるため、物件購入や投資を検討する際には完成後の環境変化を見据えた調査が欠かせません。

さらに、アメリカの主要都市では鉄道の治安悪化が社会問題となっており、例えば、ロサンゼルスでは公共鉄道にホームレスが住み着くケースも多く報告されています。観光客の多いハワイでは同様の事態が起こりにくいと考えられるものの、アメリカでの「公共交通機関=治安が悪い」という固定観念は根強く、鉄道利用にあたってはこうした点への留意も求められます。

最後に一言

「スカイライン」は、観光利便性を高めるだけでなく、ホノルルの都市構造や観光動線を根本から変える可能性を秘めており、不動産投資の観点からも注目すべきプロジェクトです。

全線開通はまだ先ですが、今後の進捗を注視することで、旅行や投資の計画において有益な情報を得られるはずです。 是非、次回ハワイを訪れる際、このスカイラインにも注目してみてください。

ハワイ不動産の購入・売却についてのご質問・ご不明点等ございましたら、Crossoverへ是非一度ご相談ください!

画像出典: ホノルル市公式サイトより https://www.honolulu.gov/dts/skyline/home/