2023年ハワイ不動産市場 – 簡単まとめ!

2023年度は米国不動産マーケットにとっては試練の年となりました。
毎月の簡単まとめでも言及していましたが、とにかく不動産取引件数の減少が顕著な1年となりました。

ハワイ不動産を取り巻く環境①【住宅ローン金利推移】

原因は言うまでもなく米国の金利上昇となります。
下記が2022年1月1日から2023年12月31日までの米国の住宅ローンの平均金利推移となりますが、2022年初頭はまだ3.0%程度だったのですね。


グラフ1:米国住宅固定ローン金利(2024年1月18日時点)

ここからインフレの影響を無視できなくなったFRBが政策金利の上昇へ舵を切ることとなり、みるみるうちに金利は倍の6.0%を超えていくことになりました。

それまでの期間、米国ではインフレが継続していたこと、また金利上昇前の駆け込み需要という側面もあり、米国の不動産価格は上昇を続けることとなりました。

米国のインフレが想像以上に根強く、大幅な金利上昇にも関わらず、その効果が見え始めたのは2023年後半です。かといってインフレ率がゼロになったわけではなく、3.0~3.5%程度に上昇率が落ち着いた、という状況で、まだまだ利下げを積極的に行う局面には来ていないようにも考えられます。

実際に、2023年度は1年を通して住宅ローン金利が高止まりした年となり、6.0%を下回ることは一度もなく、一時は8.0%近くという水準まで上昇をしたことがわかります。

この住宅ローン金利の急激な上昇は、大きく2つの心理効果を生み出すこととなります。


① 借入コストの増加を嫌気した購入者心理を冷え込ませる効果
② 低金利時代に購入 or 住宅ローン借り換えをした不動産所有者に売却を思い止まらせる効果

単純な話として、住宅ローンを組む場合にはなるべく低金利の時に組みたいというのは皆さん異論がないと思います。
一例ですが、仮に50万ドルを30年固定で3.0%と8.0%で借り入れた場合の毎月の支払額の差異を見てみますと、
3.0% : $2,108-
8.0% : $3,669-

ということで、倍とは言いませんが、3.0%と比較して8.0%で借りた場合には約75%も月々の支払いが増えるのですよね。

この状況において、積極的に不動産を購入しようというよりはもうちょっと様子を見よう、と考える方が一般的な感覚だと思われます。

また、2022年の金利上昇前に購入した人からすると、低コストで調達できたローンを大事にとっておこうという心理が働きます。

米国では日本と違って住宅ローン利用者の90%以上は30年固定ローンを利用します。日本では90%以上が変動金利を選択すると思いますので、ほぼ真逆の状態です。

3.0%前後で30年固定ローンを確保できた人は、それだけで潜在的に「勝ち」の状態で、仮に今不動産を売却して別の物件に買い替える場合にはその宝のようなローンを手放し、現在の金利でのローンを再度申請する必要が出てしまうのです。

それであれば今は売却・買い替えするのはやめておいてマーケットの様子を見よう、という考えになるのも頷けます。

ハワイ不動産を取り巻く環境②【不動産価格推移】

コロナから2022年にかけて大きく価格が上昇した米国不動産。
不動産はいわゆる「需要と供給」のバランスで価格に影響が出やすい資産かと思います。

2023年は、「金利上昇による需要の下落」から不動産価格が下がるだろうという想定が、「金利上昇による供給の下落」という別の側面で打ち消されたことにより、価格自体はステーブルな状態になった、という非常に興味深い1年となりました。

下記がハワイ不動産の価格推移の長期推移となります。歴史的にみても高止まりしていることがお分かりいただけるかと思います。

グラフ2:オアフ島不動産-成約価格中央値(1987年〜2023年)

そして下記が2020年12月から2023年12月までの短期推移となります。
直近2023年12月期の戸建てマーケットでは多少の下落が見受けられますが、全体感として価格が安定している状態であることがわかります。

グラフ3:オアフ島不動産-成約価格中央値(2022年12月〜2023年12月)

ハワイ不動産を取り巻く環境③【米ドル・日本円為替推移】

2023年度はこの米国サイドの不動産そのもののマーケット動向や金利動向に加え、日本の投資家様の場合には為替も大きく影響を及ぼした1年だったのではないでしょうか?
下記が2023年上旬から現在までの米ドル・日本円の為替推移となります。


グラフ4:米ドル/日本円為替(2024年1月22日時点)

2022年後半から大きく円高に振れたことで2022年度の円安は一時的なものだったのでは?と感じたのも束の間、2023年度は非常に綺麗な上昇ウェッジを形成し、11月まで上昇を続けました。
一旦調整に入ったものの、140円を割ることなく、再度円安基調にトレンド転換をしたようです。

2023年後半に、米国のインフレが落ち着き、比較的早い段階で利下げに転じるのでは?という楽観論がマーケット全体に流れていたようですが、米国雇用統計データなどの引き続き強い各種経済データが発表される中で、早期利下げ論が鳴りをひそめ、日米の大きな金利差はそう簡単には解消しないだろう、ということが全体のコンセンサスになってきたようですね。

2022年度はあまりにも急激に円安が進行したことを受けて、日本人投資家様からは新規の投資に及び腰になっていたケースが散見されましたが、2023年度の為替動向を鑑みて、この円安ドル高は一過性のものではない、という確証を持たれた方が増えてきたと感じています。
その上で、米ドル資産への積極的な分散投資という意味合いで、安定したハワイ不動産への投資をされるケースも増えて参りました。

また、2020年の税制改正前までは、海外不動産の加速度償却を利用した税金対策としてハワイ不動産を購入された日本人投資家様は非常に多くいらっしゃいました。
特に2017年・2018年あたりに購入された方が多く、その方々は2023年1月1日もしくは2024年1月1日をもって「長期譲渡税制」が適用されることになります。
その方々からすると米ドル建ての不動産価格そのものが上昇しているだけではなく、為替についても大幅な円安により為替差益を享受することができるようになります。
当時は1ドル110円前後だったかと思いますので、ダブルで恩恵を受けることができるということですね。

それに伴い、日本人投資家様の保有ハワイ不動産の売却もかなりの件数が進んでいる印象を受けます。

ハワイ不動産投資というのはさまざまな側面から影響を受ける投資商品ではございますが、その外部環境に応じてどのように立ち回るべきか、ということは比較的わかりやすく、投資目的も多様に設定可能なものかと思います。

2024年度も、マーケット全体にしっかりと目を向けつつ、投資家の皆様それぞれのお考えに沿ったご提案をさせていただきますので、何かご不明点等あればお気軽にCrossoverまでお問い合わせください!

※グラフ1はFreddie Macより引用。※グラフ2・3と表の数字はHonolulu Board of Realtors公表のデータを引用。
※グラフ4はTrading Viewより引用。