日頃からハワイ不動産を気にしている方なら、昨年1年を通して何度も耳にしたであろう「ハワイ不動産が超活況」という話。実際のところどれだけ好調だったのでしょうか。2021年の集計を元に振り返ります。
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全ての指標が上向き!
まずは1年間の総まとめからご紹介しましょう。下の表1・表2は、2021年ハワイ州の不動産売買に関する数字をまとめたものです。「YTD-2021」、「YTD-2020」、「YTD-2019」はそれぞれの年間の合計、横に記載された%は各年と2021の比較です。
戸建・コンドミニアムともに過去2年と比較して成約数増加、成約価格上昇、買い手がつくまでの日数が減少しており、1年を通してとても活発なマーケットだったことが分かります。特にコンドミニアムの成約件数は昨年の約1.5倍を記録し、大幅な増加となりました。
2020・2021年はコロナ禍中、2019年はコロナ以前だったわけですが、2021年はコロナの影響がなかった2019年も大きく上回る結果だったことが分かります。2020年のハワイ不動産市場は「コロナ禍なのに好調」という評価でしたが、2021年は純粋に「これまでになく好調」な年でした。過去2年との比較だけではその好調さが分かりづらいと思いますので、より長いスパンで見てみましょう。
成約件数:約15年ぶりの大きな波
上のグラフは1987年から2021年の、ハワイ州での不動産取引件数をまとめたものです。緑が戸建、黄色がコンドミニアムを示しています。これまで1980年台後半に1度、2000年台半ばに1度大きな波があったことが分かりますが、2021年はそれに近い盛り上がりを見せました。リーマンショックの落ち込みから徐々に回復傾向にあった成約件数ですが、2020年にコロナの直撃を受けた後、2021年に大きく跳ね上がったことが見てとれます。
過去2回のブームは日本を含む海外からのバイヤーが牽引したのに対して、2021年の盛り上がりはメインランドとハワイローカルの購買力によるものであることは、大きな特徴と言えるでしょう。昨年1年間はワクチン接種、国家間移動に伴う隔離期間、航空便の減便などの制約により海外バイヤーの数は減少しました。一方で、次に述べる背景により米国内でのハワイ不動産需要が大きくなり、大幅な取引件数の増加に結びつきました。
ブームの背景
グラフ1から分かるように、2021年以前から成約件数は元々上り調子でした。これは記録的と言えるほど住宅ローン金利が低い時期が続いたことに起因しています。業界の大方が、このまま緩やかに取引件数が伸びていくと予想していましたが、コロナ禍で以下の2点が思いがけないブーストとなりました。
1. 需要増
リモートワークが推奨されるようになり、比較的コロナ感染者が少なく環境の良いハワイからのリモートワークを望む米国本土のバイヤーが増加しました。また、ハワイのローカルの人々の間でも、リモートワークのためにより広い家がほしいという買い替え需要が高まりました。
2. 供給減
元々ハワイでは開発できる土地が限られており、常に需要に対して供給が不足している状態でしたが、2020年からは感染症対策のため、物件の内覧のために他人を室内に入れる事を避けたいと考える人が増え、より一層供給の少なさに拍車がかかりました。また、居住用の物件を買い替える場合、先に引越し先を確保する必要がありますが、新たな物件の確保が難しく、結果として現在の住居を売りに出せないというサイクルが発生しました。
2020年は戸建の年、2021年はコンドミニアムの年
コロナ禍の1年目、2020年は戸建が大変な人気でした。コロナ感染を恐れ、コンドミニアムよりも戸建、都市部よりも郊外の物件を好む傾向が見られました。しかしながら、元々戸建は市場に出る戸数が少ないためマーケットが過熱。戸建の価格は高騰し、市場に出されると同時に申し込みが入り、ローン利用者やハワイ外の居住者はほとんど購入できない状況が常態化しました。結果として2021年に入ると戸建を諦めた人々がコンドミニアムに目を向けるようになり、全ての価格帯でコンドミニアムの売上が伸びました。
グラフ2は2018年から2021年の戸建とコンドミニアムの成約件数です。青で覆った部分が2020年、紫で覆った部分が2021年です。2020年は戸建とコンドミニアムの取引戸数が比較的近かったのに対して、2021年はコンドミニアムが大きく上回ったことが分かります。
成約価格中央値:過去最高を記録!
上のグラフ3を見れば一目瞭然ですが、1987年以降ハワイの不動産価格はほぼ常に右肩上がりです。その中でも2020年、2021年は大きく上昇し、戸建・コンドミニアム共に過去最高を記録しました。前述の通り需要が高く供給が少ないので、価格の上昇は当然の結果と言えます。戸建・コンドミニアム問わず、人気の物件にはすぐに複数の申し込みが入り、多くの物件で売主の提示価格よりも高い価格で取引が成立する状況です。
超高価格帯も人気
全体的な価格の上昇だけでなく、超高価格帯が伸びたことも昨年の特筆すべき点です。一例ではありますが、ラニカイ・ビーチ(オアフ島カイルア地区)に面した戸建が、昨年約15年ぶりの記録的な高価格で取引されました。価格は$24.38Mです。元々世界の富裕層が集まるハワイですが、コロナ禍でビジネスが成功した新たな富裕層が流入し、より高額な物件の動きが活発になっているようです。
下のグラフ4は戸建の取引件数を価格別に比較したものです。水色が2020年、緑色が2021年です。2021年は特に$2M以上の高価格帯が伸びたことが分かります。
成約までの日数:昨年の約半分!
2021年、コンドミニアムを市場に出してから買い手がつくまでの日数中央値は、コンドミニアムが12日、戸建が9日でした。2020年はそれぞれ24日と14日でしたので、日数は約半減したことになります。2019年はどちらも約1ヶ月であったことと比較すると、大幅に短くなっていることがお分かりいただけるでしょう。2021年のハワイ不動産マーケットは完全な買い手市場となっており、人気の物件はもはや奪い合いとも言えるような状況でした。
2022年はどうなる?
2021年のハワイ不動産市場がいかにアツいマーケットであったか、ご理解いただけましたでしょうか。ここから2022年はどのような1年になるのか。現時点ではハワイ不動産市場の勢いが衰える気配はなく、多くの不動産エージェントが2022年も価格はさらに上がると予想しているようです。ただ、2020年と比較すれば2021年は市場に出される物件が増えたものの、今年これが大幅に増えるとは考えづらい状況です。そのため価格が上がる一方、成約件数が伸び悩む可能性はあるでしょう。
一点懸念があるとすれば、米国の金融政策の影響による住宅ローン金利の上昇が挙げられます。30年固定の金利は今年に入り3.22%となり、1年前の2.65%から既に上昇しています。2022年の終盤には3.7%程度まで上昇すると見込まれています。これによりアメリカ人バイヤーの購買力には少し衰えが見えるかもしれません。ただ、その分日本を含む海外バイヤーが復活すると思われます。ローン利用を前提とした低価格帯やコンドミニアムには多少影響が出そうですが、キャッシュバイヤーが幅をきかせている戸建や、金利を気にしない超高価格帯は昨年に引き続き伸びると予想されます。
金利の影響を受けそうな物件であれば、バイヤーがいる内に売却を考えるのも一手かもしれません。ご所有の物件について今後の判断を迷っていらっしゃる方は、是非Crossoverにご相談ください。
※表1〜2・グラフ1〜4:HiCentral公表資料より引用