コロナ発生から1年半 – ハワイのホテル稼働率・平均単価の現状

ホスピタリティ産業はパンデミックで最も大きなダメージを受けた業界の1つですが、ハワイのホテル業界は予想を上回る速度の回復を見せています。ハワイ州が公表している稼働率や平均単価を元に、現在の状況を解説します。

稼働率はコロナ前の8割弱まで回復

以下の表はハワイ州観光局によって発表された、2019〜2021年のホテル稼働率と平均宿泊料まとめです。棒グラフが宿泊料、折れ線グラフが稼働率の推移を表しています。

ハワイ州では昨年3月26日に、渡航者の到着後14日間の自己隔離義務がアナウンスされ、4月には如実にその影響が現れました。表から、2020年4月の稼働率・宿泊料ともに大きく下がっていることが分かります。その後昨年末まで稼働率は20%以下に留まっていましたが、今年に入り急激に向上しました。2021年5月には61.5%に達し、コロナ前であった2019年5月の79%と比較して約8割弱まで回復しました。

稼働率向上の大きな要因として、米国でのワクチンの普及と移動後の自己隔離の免除が挙げられます。ハワイ州では約6割が、アメリカ全体では約5割の住民が2回のワクチン接種を終えており、長距離移動時もワクチン接種の証明書を提示することで陰性証明の取得や自己隔離を免除されるようになりました。これが大きな後押しとなり、メインランドからの旅行者が増加し、稼働率の上昇につながっていると考えられます。

平均宿泊料は既に2019年超え!

平均宿泊料は昨年秋からすでに上昇が始まっており、今年4月にはパンデミック前の2019年の数字を超えました。2021年5月現在、平均宿泊料は$287.76(2019年5月は$225.47)となっています。渡航者の数が完全に戻り切らない内に、宿泊料がコロナ前の数字を超えるのは不思議な気もしますが、ハワイの旅行会社が正しくこの疑問について回答していましたので、以下にご紹介します。

1.ワクチン普及により、長い間自粛を強いられていた旅行が可能に
昨年から約1年間にわたって移動には多くの制約が伴い、気軽に旅行ができる状態ではありませんでした。しかし、先述の通り米国内ではワクチン接種が進み、安心して旅行を楽しむことができる状況になりつつあります。

2.国外へ旅行する際の制約を避けた結果、米国内のリゾートに人気が集中
米国でワクチン接種が進んだとはいえ、一度国外へ出ると、帰国時には陰性証明書の提出が求められます。万が一陰性証明書が取れなかった場合の不安などから、米国内を旅行先に選ぶ人が多いようです。

3.自主的に人数規制をしているホテルがある
ハワイ州では現在ホテルの収容人数に規制はありませんが、屋内の飲食店は50%以下の収容率とするよう求められています。これに準じて、いくつかの高級ホテルでは客室の稼働率を意図的に下げています。

このように、利用者の増加とコストの問題から宿泊料が上がっているのではないかとの分析でした。今後ハイシーズンである夏に向けて宿泊料はさらに上昇すると見られており、渡航をお考えの方は早めに手配を進めた方が良さそうです。


元記事はこちら!:3 Reasons Why Hawaii Luxury Resorts Are So Expensive in 2021


価格帯による差が顕著

上でご紹介した表を一見するとハワイ全体が好調であるように思えますが、細かな数字を見ると、カテゴリーによって差があります。ハワイ州のホテルについて、価格帯毎に稼働率、宿泊料、販売可能客室1室あたりの売上をまとめた資料を元にご説明します。

POINT! 「販売可能客室1室あたりの売上」とは?

全客室の売上を販売可能な客室数で割った値。稼働率を平均宿泊料で割って求めることもでき、ホテルが平均的な価格で部屋を売ることができているかを測る指標となります。

ハワイ州全体

パンデミック以前から一般的に、低い価格帯のホテルほど稼働率は高いのですが、2019年と2021年を比較すると、高価格帯ホテルの稼働率の下がり幅がより大きいことが分かります。一番下の価格帯「ミッドスケール&エコノミー」では2019年と2021年の差は-13.3%ポイント、一番上の価格帯「ラグジュアリー」では-20.9%ポイントとなりました。

高級ホテル苦戦の影には高額な運営コスト

高級ホテルでは運営にかかるコストが大きいため、通常営業のまま今回の事態に耐えることは難しいと判断し、昨年4月から営業を停止・縮小するホテルが多数ありました。そのため統計を取ることができず、表中2020年のラグジュアリーホテルの欄は「NA:該当なし」の記載となっています。

ホテル運営のコストは大きく3つに分けることができます。売上によって変動する費用、営業を一時停止することで削減できる可能性がある準固定費用、固定費用です。低価格帯のホテルでは、変動費用と準固定費用を削減することでコロナ禍を乗り切ったようですが、高級ホテルの多くは大規模で国際的なチェーンですので、多くの従業員を抱えており、費用の削減は容易ではありません。また、マッキンゼー・アンド・カンパニーの計算によると、変動費用と準固定費用を賄うために、高級ホテルではエコノミーホテルの1.5倍の稼働率が必要とされています。

このような運営コストに加えて需要の差も響いた結果、高級ホテルはより大きな影響を受けたと言えます。高級ホテルが現在もそのリカバリーの道半ばであるのに対して、エコノミーホテルはより早い復活を見せています。ただ、関係者からは今年の夏には早くも全体の稼働率は70%に届くとの予想も出ており、全体的に上り調子であることは間違いありません。

ハワイ州オアフ島

下の表はオアフ島に限定した数字です。低価格帯の稼働率が高く、高価格帯の稼働率が低いという傾向がより顕著に現れています。「ミッドスケール&エコノミー」では2019年と2021年の差は-26.3%ポイント、「ラグジュアリー」では-39.0%ポイントとなりました。これはハワイ州内の他のエリア、他のカテゴリーと比較しても大きな差であり、現時点ではオアフ島の高級ホテルが最も苦戦していると言えるでしょう。

海外観光客とビジネス利用の戻りの遅さが影響

オアフ島の高級ホテルが苦戦している背景には、やはり国際的な観光客の戻りが遅いことが挙げられそうです。上述の通り、現在はメインランドからの観光客がほとんどであり、ワクチン接種や帰国時の制約がネックとなって、海外からの観光客はあまり見られません。ハワイ州の中でもオアフ・ワイキキは海外からの観光客に人気のエリアですので、これが響いていることは確かです。

また、観光目的のハワイ渡航が回復しつつある一方で、ビジネスに関わる渡航が増えないことも一因のようです。これはハワイに限らずアメリカ全土に言えることですが、待ち焦がれていた観光旅行に出かける人が多い一方、企業はまだ出張を控えているケースが多く、ホテルのビジネス利用がまだまだ低い状態です。これまでもハワイはビジネス目的よりも観光が圧倒的に多かったものの、ビジネス利用も少なからずありました。学会や大きな会議の場合はワイキキの施設が使用され、周辺のホテルに宿泊することが定番でした。しかしながら、パンデミック下でこういった利用がなくなり、さらにオンラインによるビジネスが定着したことにより、ビジネス利用の復活がいつ頃になるのか先行き不透明な状況です。

やっぱりハワイは特別!今後も順調に回復見込み

アメリカ全体ではホテル業界はまだまだ苦しい状態が続いていますが、ハワイでは米国内の観光客をメインに着実に数字を伸ばしています。米国内の観光地の中でも、ビーチや自然が美しい場所の人気が特に高まっており、ハワイは正しくその条件に当てはまる観光地です。全米では販売可能客室1室あたりの売上が元の水準に戻るのは2023〜2024年と言われていますが、ハワイでは既にカテゴリーによっては2019年の数字を超えており、その底力を感じる結果となっています。

旅行業界では、コロナ禍の自粛の反動で旅行欲が高まった人々の背中を押すべく、マーケティングに非常に力を入れています。Marriot Internationalは「Power of Travel」と銘打ち、6月23日に世界規模のキャンペーンを開始しました。この他ホスピタリティ業界では、ワクチン接種が完了したシニア層へアプローチするキャンペーンも多く展開しています。アメリカ人の77%がこの夏は旅行に行くというアンケート結果もあり、ハワイの観光客増加もほぼ確実と言えるでしょう。

コンドミニアム型ホテルの購入をご検討中の方は是非、Crossoverまでお問い合わせください。本記事は一般的な内容となっており、各ホテルによって事情が異なりますので、ご希望に沿った物件をご案内いたします。


引用:Hawi’i Tourism Authority
参考記事:Hospitality and COVID-19: How long until ‘no vacancy’ for US hotels?
参考記事:The path to recovery for US hospitality