ハワイって今どんな感じ?<br>-渡航者数・消費額・ホテル稼働状況-

日本では3週連続でコロナ陽性者数が世界1となり、再び警戒が高まっている2022年のお盆ですが、ハワイはすっかりコロナ以前の日々に戻りつつあります。日本からはなかなか「気軽にハワイ旅行」という雰囲気にはなりませんが、力強い回復を見せるハワイ観光業について、渡航者数とホテルの稼働状況から現状をお伝えします。

※記事内の全てのグラフと表はクリックで拡大します。

これまでの流れ

数字のご紹介に入る前に、ご参考までにパンデミック発生から現在にいたるまでのハワイ州の渡航制限の推移を簡単にまとめました。厳しい規制が敷かれた時期を経て、現在は2回のワクチン接種が完了していれば、自己隔離や陰性証明書なしで渡航できるようになっています。

2019年〜2020年2月:ハワイ州への渡航者数と渡航者による消費額が過去最高を記録
2020年3月:ハワイ州への渡航制限と全ての渡航者について到着後の自己隔離が義務化
(フライト・クルーズはほぼ全てキャンセル)
2020年10月:アメリカ本土からの渡航者は、陰性証明の提示でハワイ到着後の自己隔離を免除
2020年10月:日本からの渡航者も陰性証明の提示でハワイ到着後の自己隔離を免除
2021年6月:米国からの渡航者は陰性証明不要に。ワクチン接種証明の提示でハワイ到着後の自己隔離を免除
2022年3月:米国からの渡航者について全ての規制を撤廃
2022年6月12日:日本からの渡航者も陰性証明の提出が不要に。ワクチン接種証明の提示のみ継続。


これまでの流れを記事にまとめています。詳細は以下の記事からご確認ください。
日本人が気になるハワイのコロナ情報 – 時系列一覧


渡航者数:「国内から vs. 海外から」で大きな差!

まずは、一番分かりやすい指標である渡航者数から見ていきましょう。以下の3つのグラフは、2019年12月から2022年6月までのハワイ州への渡航者数を、2019年(コロナ以前)の同月と比較して%で表したものです。グラフ内の灰色の太線が100%であり、これを下回る時期は2019年の同月よりも渡航者数が少なく、上回る時期は渡航者数が多いことを意味しています。

グラフ1はハワイ州への全ての渡航者数を表しています。アメリカ本土からの国内移動の渡航者と、ヨーロッパ、アジアなどの国外からの渡航者全ての合計です。2020年初旬にほぼゼロまで下がりましたが、同年後半には早くも回復へと向かいました。2022年6月には841,809人の渡航者を迎え、コロナ以前の89%まで数字が回復しています。

グラフ2のアメリカ本土からの渡航者数に至っては、2021年上旬からコロナ以前を上回る渡航者があり、2022年6月も107.9%の盛況となりました。一方でグラフ3の日本からの渡航者数は、回復が大幅に遅れていることが分かります。昨年末から徐々に増加しつつあるものの、今年6月時点で渡航者数は11,940人、コロナ以前のわずか9.4%にとどまりました。

渡航者の消費額:パンデミック発生以前より約15%増!

観光が主な産業であるハワイとしては渡航者数も大事ですが、渡航者がハワイでいくら消費するかという点がより重要です。以下の表1は、2022年前半のハワイ渡航者による1日あたりの個人消費額と、2019年同期間の消費額をカテゴリー別に比較したものです。金額の単位はドルです。

渡航者全体での1日あたりの個人消費額は既にパンデミック以前を上回っています。「ショッピング」と「その他」以外のカテゴリーは押し並べて増加となりました。全体では14.2%の増加となっており、インフレによる物価上昇の影響もありますが、観光業としての売上は順調な回復と言えるでしょう。


表1:ハワイ州渡航者による消費額-総合

表2は日本からの渡航者による消費額です。2022年前半、日本人による1日あたりの個人消費額は2019年と比較して、4.3%の減少となりました。まだ渡航者全体の個人消費額よりも多いですが、2019年と比較するとその差は小さくなっています。


表2:ハワイ州渡航者による消費額-日本

ご参考までに、以下は日本人渡航者による消費の内訳です。レストランでの支払い金額が減少し、食材購入の金額が増加、娯楽への消費が減少、レンタカーとガソリンへの消費が大きく増加、ショッピング全体が大幅に減少、という概要です。この事から、現在ハワイに滞在する日本人は自分で食材を買って調理し、レンタカーを借りて自分で移動するなど、ハワイでの生活自体を楽しむスタイルが多いことが分かります。外食、アクティビティ、ショッピングを目的にした典型的な観光客の傾向とは対照的です。

2022年1〜6月の日本からの渡航者は、平均滞在日数が約11日、81.5%がリピーターという数字も発表されており、現在ハワイを訪れている日本人は、「日程的にも金銭的にも余裕があるハワイ好きのリピーター」という像を裏付ける形となっています。


表3:ハワイ州渡航者による消費額-日本(詳細)

渡航者全体、日本人渡航者の両者で減少したカテゴリーの「その他」ですが、ここにはクルージングパッケージや、ハワイを母港とするクルーズ船内での消費などが含まれます。コロナの発生以来クルーズが敬遠されている事を考えると、当然の減少と言えます。

フライト数:夏休み期間は日本-ホノルル間も増便

上記の通り、ハワイへの渡航者数がなかなか回復しない日本ですが、この夏はパンデミック以来最多の旅行者数となる見込みです。現在ハワイと日本を結ぶフライトを運航しているのは、JALANAZIPAIRハワイアン航空の4社。一時期はフライト数を月に数本まで減便するなど、とても厳しい状況でしたが、現在は4社が定期便を運航し、毎日日本-ハワイ間のフライトがあります。

2022年7月〜10月はANAが期間限定でフライング・ホヌと呼ばれる、海亀(ホヌ)のイラストでラッピングした航空機を定期運航するなど、世間の注目も集めています。また、8月にはハワイアン航空が羽田-ホノルル線を再開し、日本市場に対する航空会社の期待が感じられます。

ホテル稼働率:あと少し!約9割まで復活

以下の表1は、ハワイ州全体とオアフ島のホテル稼働率を四半期毎にまとめたものです。州全体とオアフ島、さらにホテルのカテゴリーを5つに分類し、それぞれの稼働率が示されています。ホテルのカテゴリーは価格帯順に並んでいます。期間は2019年第1四半期から2022年第2四半期ですので、コロナ以前とコロナ禍での数字を比較することができます。

2020年第1四半期から陰りが見え始め、2020年第2・第3四半期は暗黒時代、その後少しずつ回復している様子が分かります。空欄部分は、ホテルのクローズにより有効な数字が得られなかったカテゴリーです。2022年第2四半期にはコロナ以前の8-9割程度まで回復しており、カテゴリーによっては9割を超える数字に到達しました。繁忙期である夏とクリスマスシーズンを含む第3・第4四半期にはさらに数字が伸びると見られ、パンデミック以前の水準まで戻ると期待する関係者が多いようです。

表4:ハワイ州ホテル稼働率(2019年Q1〜2022年Q2)

ホテル平均宿泊料:すでにコロナ前を大幅に上回る!

最後にご紹介するのはホテルの平均宿泊料のまとめです。カテゴリー分類と期間は表1と同様です。稼働率と同じように2020年第3四半期からコロナの影響が見られますが、2021年の第2四半期には既にパンデミック以前の数字を上回っており、稼働率と比較して回復の速さが印象的です。

2022年第2四半期には2019年の数字を平均で20%以上上回り、ラグジュアリーホテルにおいては約40%もの上昇となりました。インフレによる物価の上昇が大きく影響しており、この状況が続くと繁忙期の夏とクリスマスシーズンは更に宿泊料が上昇すると考えられます。

表5:ハワイ州ホテル平均宿泊料(2019年Q1〜2022年Q2)

余談ではありますが、ハワイ州がメインランドとカナダからの旅行者に実施した満足度アンケートにて、「今後5年以内の旅先としてハワイを選ばない」と回答した割合は、2022年第1四半期と比較して第2四半期では僅かに増加しました。「ハワイに戻らない」と答えた人の内、約半数が物価の高さを一番の理由に挙げています。為替の影響がないアメリカ人でもそう感じるわけですから、為替の影響をダイレクトに受ける日本人旅行者にとって、宿泊料の上昇は痛い出費となりそうです。

※グラフ1-3・表4-5:Department of Business, Economic Development & Tourism公表データを引用
※表1-3:Hawaii Tourism Authority公表データを引用